スポーツが教科教育のみならず、課外教育としても採り入れられ、子どもたちの重要な教育手段として学校教育に組み込まれてきたのは、こうした理由であったことを確認しよう。繰り返すが、スポーツが感情のコントロールの教育的手段として重視されてきたことには注目すべきである。
こうしてみると、指導者は子どもたちがスポーツ技能を身に付けていく過程にかかわるけれども、子どもたちはプレイする中で感情のコントロールを学び、そしてまたそこから脱け出し、より原初的な感情の発現をどのように安全に行うかを学んでいることにも注目しなければならない。
スポーツは「性格の鎧」を形成する教化の場である、と同時に、それを打ち破る発散の場でもある。規制が多く、統制がとれた社会に窒息しそうな子どもたちが、自分なりの「感情発散を安全に行える場」であるスポーツを再評価し、感情表出の側面を重視したスポーツ指導にもっと積極的に目を向けても良いように思う。
参考文献:
「デカルトからベイトソンへ 世界の再魔術化」モリス・バーマン著 柴田元幸訳 国文社 1989年
「文明化の過程(下)社会の変遷/文明化の理論のための見取り図」ノルベルト・エリアス著 波田節夫他訳 法政大学出版局 1978年
「文明化の過程(上)ヨーロッパ上流階層の風俗の変遷」ノルベルト・エリアス著 赤井慧爾他訳 法政大学出版局 1978年
「遊びの社会学」井上俊著 世界思想社 1977年
「エリアス・暴力への問い」奥村隆著 勁草書房 2001年