最終更新日
Thu, Mar 13, 2008
「感情の噴出」

4)闘争本能を呼び覚ますもの
 エリアスも指摘するように「スポーツは本質的に競争的であり、それゆえ攻撃性と暴力性を喚起する」。競争が激しくなれば、どうしても生の感情の噴出を抑えられなくなりがちである。スポーツの場において、攻撃性、暴力性、生の感情が外に現れ出る理由はいくつか考えられる。

 もともと競争そのものが闘争本能を呼び覚ますものではあるが、加えて、そのゲームの準備にかけたエネルギーの量が多ければ多いほど勝敗に対する思い入れはさらに強くなる。競技スポーツの最大の祭典であるオリンピックやサッカーのワールドカップが熱狂的に迎えられる要因のひとつは4年に一度という開催スケジュールにある。準備期間が長い分、それに注がれるエネルギーは膨大なものになり、それに比例して選手の勝敗に対する意気込みは強くなる。ゲームは緊張をはらむ激しいものになり、観客も敏感にそれを感じてゲームに没頭し、熱狂する。

 加えて、勝ち抜かなければならない厳しい予選があり、本大会の参加資格を得ること自体が容易なことではない。本大会は特別に選ばれたものの戦いの場であり、そこで戦うことは選手にとっては大きな名誉となる。選ばれた特別のものしか手にできない勝利は希少なものとなる結果、それは特別な意味を持ち、その勝利を求めて真剣な戦いが繰り広げられることになる