スポーツそのものが本質的に競争的であるために、人が持つ生の感情の噴出を誘発させる力をもっていることから、スポーツはそうした「感情の抑制を学ぶ場」として活用されてきた。イギリスのパブリックスクールにおいてスポーツが紳士育成のための重要な教育手段と認められたのは、たとえば「急場においての沈着冷静な行動」をスポーツが教えてくれると考えたからである。
激しい身体接触がルール上認められているラグビーフットボールは、人為的に闘争心を呼び起こすスポーツだと考えて良い。子どもたちはプレイする中で思わず暴力をふるいたいという気持ちに駆られることがあるかもしれない。しかしそこで、その気持ちをグッと抑え、紳士的に振る舞わなければならない。相手の暴力に反射的に思わず応ずるのではなく、ルールに則り、ゲームを進めなければならないことを学ぶのである。
身体接触は暴力や闘争心を直接くすぐるものではあるが、競争それ自体も激しさを増すにつれて勝利を求める意地のぶつかり合いが顕著になり、同様なことが生じる。スポーツはこのように生の感情が噴出してくる状況を意図的に作り出せるのだ。人はその中でいかにそれをコントロールするかという訓練を受けるのである。放っておいてはどこに行くかわからない感情を手なずけ、飼い慣らし、コントロールしていく術をスポーツの中で学ぶのである。