大西武三先生の研究テーマは「ハンドボールにおけるコーチング」です。初心者から一流競技者まで、あるいは少年から高齢者まで、ゲームの分析を通して何が課題となり、どのようにトレーニングをすれば、目標としているハンドボールになるのか、それを現場でのコーチング活動と同時に実践しながら追究してきました。
ゲーム分析によってハンドボールゲームの構造を明らかにし、それを構成している技術・体力・戦術の理論的な究明を行い、最終的にそのトレーニングの効率的な方法を見出すことが目標です。これを指導の面から言えば、チームが目指すゲーム目標に向けて、練習内容を精選し、個々の選手が自分の役割を果たすことができるようにすることだと言います。
「チームプレーと言うのは選手の個人技の集大成であって、個人技なくしてチームプレーはあり得ない。個々の自立した能力を集約したのがチームであり、だからこそ優秀な選手を集める代表チームが成り立つのである」。では個人の能力を高めるためにどのようにすればよいのか。練習のための練習にしないためには、個々の選手のモチベーションをどう形作るのか。ここでもゲームでの個々の選手の分析、そして評価が大切になります。ハンドボールゲームでは1ゲームで60〜70回の攻撃が行われます。攻撃率、ミス率等といった形で「数値化」することで、目指すプレーとの比較により選手自身が評価することができるようになります。
「対外練習試合はほとんどやらない」「チーム全体を数チームに均等に分ける」「練習時間は1日2時間30分から3時間、日曜日は休み」「日々の練習はキャプテン中心に進める」。大西先生のことばを聞けば聞くほど、もう一歩伺いたいことが増えます。32年間に及ぶ男子部監督時代に関東大学リーグで春秋合わせて優勝15回、大学選手権では優勝3回、準優勝3回、3位12回という輝かしい戦績をあげた、その背景にはどんな指導理念と冷静な分析があったのか、ハンドボールという1競技にとらわれず、あらゆるスポーツの指導者にとって有益な知識と経験を共有したいと考えます。