この3年間、川勝氏が取り組んだ最大のテーマは「積極的な若手選手の活用によるチームづくり」でした。今の若手選手の現状を知る中で、欠かしてならないことは何か。その前提には、指導者としてブレることのないサッカー哲学がなければなりません。そしてもっと大事なことはそれをどうやって具体的な練習、指導に落とし込んでいけるかでしょう。
そうした中、これまでにない「気づき」があったと言います。「引力」と川勝氏は表現しますが、トップチームに選手を引き上げる、試合に選手を起用する、選手を課題に取り組ませるなど日常的な指導の場面にはすべて、監督と選手の間に「互いに引き合う力が働いている」ことに気づいたそうです。
そこには緊張を伴った真剣な関係性があるといいます。真摯にサッカーに取り組もうとする選手に、私たち指導者は本当の意味で進化し、資質を高めることができているのだろうか。もしこのバランスが崩れてしまえば、一方が他方に引きずられるか、選手が離れていってしまうことになります。
世にはサッカーの情報があふれかえり、選手はこれまで以上に判断材料を持っています。それはサッカー界向上のためには歓迎すべき、止めようのない時代の流れです。翻って指導者は、その若々しい選手の可能性に向き合えるだけの準備ができているのだろうか。
本講習会では、もう一度「サッカーをいかに見るか」という基本に立ち返り、サッカー哲学、練習法、選手の評価、といった3つの主題を取り上げて、「慣習」や「経験」に囚われない指導の在り方を考えていきます。