スポーツを指導するにあたって、頭を悩ませるひとつに「選手の心をいかにつかむか」という大きな課題があります。技術や戦術を語る以前に、選手と指導者との信頼関係が築かれていなければ伝えたいことも思うように伝わりません。
スポーツ指導者ならば誰もが経験する場面を題材に、そのときどのように対処し、どのような結果が生まれたのか、またその対処法の前提となる考え方は何であるのか、現在、指導者として第一線に立たれている方を講師にお招きして定期的に講習会を開催し、参加者とともに議論を深めていきたいと思います。
第1回目となる今回は『「叱り方」を考える』、ひとりひとり能力も性格も普段の生活も異なる選手に「どんなことに対して、いつ、どのように叱るのか」。ここには指導者の根底的な考え方が自然に現れてきます。講師はサッカー界で活躍される若手指導者、田部学氏(FC東京 U-15むさしコーチ)です。田部氏は、ひとりひとりの顔=特徴が見えるサッカーを目指して、サッカーというシーンだけでは捉えきれない選手を知るため、選手が所属する学校を訪問したり、家庭との会話の機会をつくるなど日頃から地道な活動を怠っていません。まず田部氏の指導の前提となるサッカー観、育成についての考え方をお聞きした上で、実際に経験し、対処した「叱り方」を例に「選手の心をつかむ」方法を伺います。