PK戦の末、イタリアが4度目の栄光に輝き、幕を閉じた2006年FIFAワールドカップ・ドイツ大会。
そして、この大会が3度目の本大会出場となった日本にとっては、厳しい現実を見せつけられた大会でもあった。日本と世界との差はどこにあるのか。次のワールドカップまでに日本は何をすべきなのか。日本が世界トップ10に入れる日は本当に来るのだろうか。そしてサッカーに携わっている自分は何をすべきなのか、何ができるのか。
そんな自問自答を繰り返す中で、実際に自分の目で見、肌で感じ、その地で改めて考えてみることがもっとも必要なのではないかという考えに至った。同じような思いを持つ方々と行動をともにすれば、その見聞はさらに価値を増し、互いに触発する機会ともなるだろう。その一歩を記すにふさわしいイタリアには、川勝良一氏を始め、伝手もある。私は迷うことなく目的地をイタリアと定め、年末のあわただしい時期に行動を開始した。そう、世界のイタリアを感じるために。
年明けの16日、朝9時に日本を発ったのは総勢わずかに5名。しかし、呼びかけからほとんど考える時間を与えることなく、よく決断してくれたものだと、今、思えば冷や汗が流れる。新しい何かに触れたいというやむにやまれぬ気持ちだけが私たちを動かしていたのだと思う。
パリ経由でイタリア、ミラノ・リナーテ空港に到着したのは現地時間で夕方5時をまわっていた。早速、航空機に預けた荷物を受け取ろうと、回転台の前に待つこと30分以上。むなしい時間が過ぎた。いつまで経っても私たち全員分の荷物は出てこないのである。いきなりのハプニングであった。「こんなことはよくあるものさ」と言わんばかりの空港職員に対し、片言の英語で説明するが一向にらちは空かない。ようやく職員を納得させ、手配を終える頃には7時はとうに過ぎていた。翌日にはホテルに届くという話が、結局荷物が届いたのは旅行3日目のことだった。先を思いやられる「手厚い」洗礼だった。