「守・破・離」(しゅ・は・り)とは江戸時代中期の江戸千家の宗匠、川上不白のことばで、先人がつくりあげた芸の型を忠実に継承しながら、やがてそこから脱皮し、型にかなっていながら型にとらわれない自分なりの芸風をつくりあげるという芸の習得過程を指したものである。認知科学の著書で有名なドナルド・A・ノーマンの考え方を援用して大胆に少し解説してみよう。
「守」とは師匠のやり方を順守することを指しており、師匠の教えを細部にわたって身につけていく教えの「蓄積」の段階である。そして見よう見まねで、あるいは叱咤激励を受けながら「調整」して師匠の教えをすべて受け継ぎ、さらにはその殻を「破」って自分なりの境地を切り拓き、ついには受け継いだ芸から「離」れ、その「再構造化」をはかるのである。芸の修業は真似から始まるが、決して単なる「物まね」で終わるわけではない。自分なりのやり方をいずれ身につけなければならないのだ。スポーツの基本技能もどうやら同様のようだ。
*参考文献 源了圓「型」創文社1989年 ドナルド・A・ノーマン「人を賢くする道具」新曜社1996年